となりの音楽家

ひとりごと

老音楽家の楽しみ
となりの音楽家のお友達、山の音楽家の小リスさん。

 

  新型コロナの感染禍は10106の音楽生活、演奏活動にも大いに影響を及ぼした。コンサートは軒並み休止、遠出もままならない。今年は秋に自粛ムードはなくなったものの、持病持ちの高齢者,10106はいまだに自粛モード続行中である。

  若くない10106もここ数年、体の不具合が増えつつある。筋力が落ちたせいか?ヴァイオリンの弓を重く感じ、弓のコントロールに難渋することが多くなった。運弓が不自由になり、速く奏くことや弓を軽快に跳ねることがはもちろん、安定して音を出すことさえ難しい。聴力、視力も徐々に落ちてきてはいるが、特に困るのは記憶力!前の練習で修正したことを、次の練習で忘れていることも多くなり、曲の習熟まで時間を要するようになっている。さらにもう一つ、気力や集中力の低下である。演奏時間が長くなると気力や集中力も切れてしまうのだ。その結果、楽器を持つ時間が明らかに少なくなった。

  10106が体調の変化に気付き始めたのはコロナ感染禍がはじまる少し前。最初は戸惑うと同時に落ち込むことが多かった。演奏家は演奏時間(練習時間)が減るとパフォーマンスが明らかに落ちる。これはスポーツと同じ。そこで様々な対処法を試してみた。弓に関しては、従来もっとも重視してきた音の美しさを追求することを思い切って断念!奏きやすく、音出の良い弓にシフトすることにした。弓の変更で美しい音、華やかな表現のパフォーマンスは仕方なく下がる。しかし、暗い曲やはっきりしたメロディは従来とあまり遜色なく表現できることがわかった。

   

  10106がメンバーのAカルテットでは、今ベートーベンの弦楽四重奏曲No11を練習している。実はAカルテットが結成当初、最初の練習に選んだ曲はベートーベンのNo1だった。今はNo11、練習は順調、選曲は成功したようだ。そのあとはNo13を考えている。クラシック界では「ベートーベンに始まり、ベートーベンで終わる」という言葉もある。Aカルテットには当面の目標ができたようだ。10106が若いころ、無人島にレコードを一枚持っていくとしたらどの曲にするか?という質問について書かれた本を読んだ記憶がある。その答えには、バッハの無伴奏チェロ組曲、モーツアルトのレクイエムと並んで、ベートーベン後期の弦楽四重奏曲が上位に選ばれていた。老音楽家たちで構成しているAカルテットにはとっておきの選曲となりそうだ。

  次に楽器を持つ時間が減少する件!これはどうしようもないと当初は相当落ち込んだ。しかし、喜べ!練習機会が少なくなってから、練習が毎回楽しいイベントに変わっていた。集中力も上がる。前の練習で修正、対処できたことを忘れていたことで、毎回楽譜と新鮮に向き合える。さらに、同じ曲を長い期間をかけて練習することで、曲をより深くまで味わえるという新たな魅力にも気づいた。10106も若いころにはよりたくさんの曲と出会うことが楽しかった。しかし、音楽と向き合う時間が少なくなった今、充実した時がかえって増えたのかもしれない。

  あなたは最近難しくなったことはありますか?  どう対処していますか?
困難な状況のなかで、楽しみは見つけられましたか?

  (10106: 2022.10/5)  

となりの音楽家ひとりごと

年齢と演奏:2004.5/5

グリーグとシベリウス:2005.9/21

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アガル:2007.12/10

モーツアルト:2008.7/1

クロイツェルソナタ: 2009.6/1

OBオーケストラ:2014.5/20

ガブリエル・フォーレ:2014.10/1

ラッスンゴレライ:2015.3/15

カーリング:2016.3/28

日曜美術館:2016.8/1

器用な人、凡人、不器用な人:2016.10/10

コンピューターとのお付き合い:2017.3/10

楽譜、そして準備:2017.6/1

音楽と忖度(そんたく):2017.10/21

模写と演奏:2018.7/10

ドラゴンクエスト:2021.11/10

音楽の聴き方と奏で方:2021.11/11

カーリング再び:2022.3/30

 バッハを聴いて:2022.10/3

 

 
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