となりの音楽家

ひとりごと

摸写と演奏
となりの音楽家のお友達、山の音楽家の小リスさん。

 

  お気に入りのテレビ番組「日曜美術館」で先日「摸写」について放送していた。ご存知とは思うが「摸写」とは先人の名作絵画が色褪せなどで傷みが激しいとき、製作当時の色彩を復元して新たに模造作品を生み出す作業。美術作品には直接修復(復元)するという作業もあるが、摸写された作品は身近に展示することができ、私ども庶民にとってはうれしい計らいである。

  10106は美術(とくに絵画)にも興味がある。そして絵画の世界に音楽演奏のヒントを感じることが多々ある。そこで、「摸写」が音楽演奏では何に当たるのか?考えてみた。著名な作曲家の作品を著名な演奏家が名演したとしよう。その音源が残ってさえいれば、現在なら雑音を除き、響きを調整することが比較的容易になっている。そしてその修復された音源は復刻版してCDなどですでに広く販売されている。でもこれは絵画における「復元」という作業に当たるようだ。CDなどでの音源の配布は絵画の画集としての頒布に当たるのであろうか?

  一方、音楽演奏の複写にあたるのは、名演の録音音源、動画を真似て演奏することになるのだろうか?この作業は学生など若い音楽家が時々行なっている。ただ、この演奏は感動を呼ばない。若い未熟な演奏家といえども、名演を聴き、作曲家の意図を察したうえで、自分なりの完成度で演奏するとき、感動が得られる。と10106は思う。

   

  思えば楽譜には音の高さ、長さ、速さ、大きさなどを記載しているが、それはあくまでも目安!ただそれを音として出力すればよいのであれば、コンピューターで簡単に名演が可能となるはず!しかし現状では無理!知り合いに「我々の生きてる間は難しいが、もう少したてば可能かも、、、」とのたまう輩もいるが、、、

  バロックのころから現代にいたる過程で作曲家が楽譜に記入する項目が徐々に増えてきている。しかし、実際には演奏の内容は演奏者ごとに大きく異なっている。それが個性!コンサートに出かける大きな原動力ともなっている。楽譜は絵画に例えると下書きに当たる。と10106は思う。例えば線の太さ、物の大きさ、配置、色の濃さなどの指定!また、現代に近くなるにつれて、表情記号が多くなる。これは色使い、タッチについての作曲家の希望(お願い?)だろう。ただ、ここは赤でと指定しても赤には無限の色合いがあり、優しく描いてといっても優しさは人それぞれ、タッチも無限!

  また、絵画は作者が完成まで作品制作に関わり、完結させるが、音楽作品は下書きの段階で作曲者の手を離れる。音楽ではシンガーソングライターと称し、自ら演奏する人もいる。バッハ、モーツアルト、ベートーベンなど自ら作曲した曲を初演したとの記録もあるが、その演奏が世紀の名演だったとの話はほとんど聞かない。今でも時に現代音楽の作曲家が自身の作品を演奏(指揮)する場面に遭遇するが、特に感動を呼ぶ演奏とは限らないと思うのは10106だけであろうか?

  名演を聴き、詳細に作品の演奏方法を検討するのは悪いことではない。しかし、その作品の楽譜を眺め、作曲者の意図(心)を汲み、音に出して、曲を自分なりに昇華させて聴き手に伝える。その過程が演奏者の至福の時となっているように思う。名演の録音音源を繰り返し聴くのも悪くないが、生のコンサートはただ一度限り!同じコンサート(演奏)は二度とない。

  あなたはコンサートになぜ出かけるのですか?どう楽しんでいますか?

  (10106: 2018.7/10)  

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