ピアノ展示会
 

  先日、ピアノの展示会があり、京都まで出かけた。高価なグランドピアノの聴き比べをするという企画で、友人のHさんが演奏したが、なかなかの盛況だった。

  展示ピアノは4種類。スタインウェー(ニューヨーク)はヤマハとともにコンサートでしばしばお耳にかかるピアノだ。これまで持っていたイメージ通り、どの音域もほど良く響き、とくに高音のきらめきはさすが世界のブランドである。べーゼンドルファー(ウィーン)は猿沢池ほとりの“ならまちホール”にもある。その深みのある上品な響きはたまらない。今回はじめて聴いたベヒシュタイン(ベルリン)はしっかりとしたきれのよい響きでドイツ的、ベートーベンの交響曲、いや協奏曲には最適か。プレーエル(パリ)は響きにむだがなく、ピアニストの個性が(テクニックも)そのまま表現される……鏡のような楽器

  なるほどそれぞれ国民性が響きに色濃く反映されているんだ。などと想いをめぐらせながら、楽しい時間をすごした。

   

  私はヴァイオリンの展示会があるとよくでかける。展示してあるヴァイオリンを試奏?して味わうのが目当てだ。高名な製作者が作った楽器の音色は、どれも個性豊かであるが、国民性(民族性)も形や音色に必ず滲み出てくるのがおもしろい。

  ストラディヴァリウスに代表されるイタリアの楽器の音色は明るく、高音に伸びがあり、良く透る。とくにいい楽器の響きは上品だ。スタインウェーのように……。フランスの楽器は音が大きいのが特徴とよく言われるが、中音域の物憂げな響きも魅力である。また、プレーエルのように奏者の個性がそのまま表現される恐さもある。ドイツの楽器の響きは渋味があり、重厚だ。ベートーベン、ブラームスの交響曲(ベヒシュタイン?)にぴったり。べーゼンドルファーはさしずめドイツのスタイナーやクロッツに代表される丸い楽器か。大きな音こそ出ないけれども、低音から高音まで貴賓のある響きは18世紀の貴族に大層人気だったとのこと。ストラディヴァリウスがブランドになったのは19世紀になってからだそうな。

  さて、あなたのお好みは?  

  (TNVN 2001.4.10.)