となりの音楽家

ひとりごと

ガブリエル・フォーレ
となりの音楽家のお友達、山の音楽家の小リスさん。10106

 

  先日10106が主催するとなりの音楽会が開かれた。10106は1998年からほぼ年に一回、秋に親しい演奏家に手伝ってもらい、開催しているクラシック室内楽のコンサートである。スタッフは私の家族たち、年に一回この日は10106の発表会をサポートしてくれている。嬉しい限りである。となりの音楽会という名称は2004年、このホームページを開いたころから使用している。今年の「となりの音楽会」の副題はガブリエル・フォーレ、心の歌。プログラムをフォーレの室内楽だけで構成した。

  ガブリエル・フォーレとの出会いを思い起こしてみた。若いころはオーケストラが音楽活動の中心だったので、フォーレの作品とは接触の機会がなく、友人や音楽関係の著述の中で「レクイエムはモーツアルトもすばらしいが、フォーレもいい。」と何度か聞かされた覚えがある。実際の出会いは1990年代の前半?山の音楽家たちの会に顔を出しはじめたころのこと。子供ころ以来、避けてきた?ヴァイオリンのソロ曲を再び奏きはじめた頃。いろいろな小品が入っている「バイオリン31選名曲集」を手に入れた。片っ端から演奏していると、フォーレの《夢のあとに》と《シチリアーノ》が収載されていた。フランス近代音楽はもともと10106の感性に自然になじみ、ドビュッシー、ラベル、フランクなどの曲は若い頃からたまらなく好きだったのだが、一味違うフォーレにも、すぐに虜になった。そのころテレビで?で聞いたチェロがごそごそ奏でる《子守唄》にもすぐに嵌まり、
楽譜を探しだして演奏してみた。この曲はその後も機会があれば頻繁に演奏するお気に入りの一曲となり、今年のとなりの音楽会2014でもコンサートの最後に閉めの曲として、感慨深く演奏した。

   

  フォーレの音楽の魅力を語りはじめるときりがない。それを承知で、ごく一端を10106の言葉で語りたい。まずは作品の全体像、「日常のひとコマを切り取る」、そんな印象を持っている。フォーレの作品といっても様々だが、いかにもフォーレらしい曲ではいつもなんとなく、普通に始まる。そしていろいろあって、途中高揚する部分が必ずあって、最後は最初のテンションに戻って終わる。積極的に語りかけたり、驚かせたり、劇的な演出はほとんどなく、演奏効果は乏しい。この構造はドビュッシーやラベルの作品にもよく使われている。また、彼らと同時代のフランス近代絵画や、フランス映画でも、、、
10106にとってはそれらは全てお気に入りでもあるのだが、、、(^^)

  ただ、ドビュッシーでは語りたい美、ラベルでは熱い思いが作品の中に明確に感じ取れる。それに対し、フォーレの音楽では、こうもしたい、ああもしたいんだけれども、こんなことがあって、、、やっぱりこの辺で我慢しておこうか?と、まるで少女マンガのヒロインの心のように揺れ動く。これが音楽だ!と提示する古典、こうあったらいいな?と夢を語るロマン派、故郷の旋律に安心と喜びを見出した多くの作曲家などとは目指す世界がまるで違う。小説では「私小説」という分野がある(あった?)が通じるものがある。フォーレはそんな音楽作品を書ける数少ない作曲家だ。緊張感も少なく、力強さにも欠けるこの音楽はいったい何?若い頃にはまったく理解不能だったが、今はなんとなく解かる。10106も年をとったということか?

  フォーレの音楽はごく身近でありながら、現実からふと遊離したうたかたの心の旅。その中に自らを委ねることのできた時、心の内面を洗濯するというご褒美がえられる。 (^^)

  あなたはフォーレの音楽に身を委ねることができますか?バッハでも、ジャズでも、お散歩の途中にもフォーレの世界への入り口が隠れているようにも思うのだが、、、

  (10106: 2014.10/1)  

となりの音楽家ひとりごと

年齢と演奏:2004.5/5

グリーグとシベリウス:2005.9/21

オケのヴァイオリン:2006.5/22

練習:2007.10/1

アガル:2007.12/10

モーツアルト:2008.7/1

クロイツェルソナタ: 2009.6/1

OBオーケストラ:2014.5/20

 

 
 
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