室内楽の楽しみ
 

  先日、中学・高校時代の友人Mの主催する室内アンサンブルのコンサートがあり、京都の八幡市までに出かけた。プログラムはバッハの無伴奏ヴァイオリン曲のシャコンヌをアンサンブル用に編曲版とモーツアルトのレクイエム(鎮魂歌)ととても興味深い取り合わせであり、期待して出かけた。バッハのシャコンヌはオーソドックスな仕上がりで、後で友人のMの編曲だったとわかったが、さすがと思わせる作品に仕上がっていた。モーツアルトのレクイエムは合唱がとてもよく、期待以上の演奏会であった。

  友人のM氏は私の3年上であり、オーケストラ活動をはじめたころ、弦楽四重奏にさそわれ、音楽の楽しみ方を教えてもらった師、あるいは音楽の麻薬的世界に引きずり込んだ兄貴分といえる存在である。中学・高校時代の数年間、いっしょに弦楽四重奏をさんざんやった。そこで、幸か不幸か室内楽アンサンブルのたまらない魅力にとりつかれた。大学に入ってからも室内楽の仲間を探して、オーケストラに入ったがなかなかいいメンバーにめぐり合えなかった。卒業ま近になり、やっとアマデス弦楽四重奏(アマデウスではありません)を結成でき、これも満足のできる活動ができた。そして、今は少し毛色が違うがトリオ・ラ・モンターニャと称するタンゴアンサンブルにはまっている。

   

  室内楽の楽しむコツは何か?楽器の技量が比較的揃っていること、音楽(演奏)に対する方向性(姿勢)がある程度一致していること。確かにこれが必要条件で、これは二人の合奏からオーケストラにいたるまで共通する。しかしこれがなかなか難しい。楽器の技量は一人づつ必ず少しは異なっているし、得意不得意なパッセージも人により異なる。音楽(演奏)に対する方向性(姿勢)も一人一人違う。そこで、実際にはお互いの個性を尊重し、理解すると同時に自己主張もしっかり行うことが必要となる。理念としてはまったく問題ないのだが、実際にはこれがはなはだ難しい。ここが克服できるかが、合奏が楽しめるか否かの境界線となる。

  オーケストラなど大きな団体ではこれが特に難しいが、室内楽では人数が少ないだけに比較的易しいといえよう。ここで室内楽のもっとも有効な練習方法をお教えしよう。それは仲良くなること。お互い親密になればお互いの不得手なところも許しあえるようになり、すばらしいところもみえてくる。そこで初めて、演奏者お互いが自身の姿(本性)をさらけ出して、合奏できるようになる。社会や仕事では話し合い(会議)で問題をクリアーしていくのが建て前となっているが、音楽では感性が前面に出てくるので話し合いだけではなかなかうまくいかないようである。実社会でも実際はそうなのかもしれないが……

  あなたはどんなお仲間とどんな合奏をしていますか?仕事でもいいアンサンブルを奏でられればいいですね。

  (TNVN 2001.11.24)