先日、あるコンサートのリハーサルで突然私のヴァイオリンの弦がきれた。予備の弦に張り替えてリハーサルは続けたが、新しい弦は少しづつ伸びるため音程が安定しない。本番前の調弦(音程合わせ)にも時間がかかり、演奏の乗りももう一つだった。

  ヴァイオリンの弦はいったい何で出来ているか?もともとは羊の腸を乾燥させたガット弦だった。ガット弦は今も使われており、その上品な音色はたまらない。しかし、切れやすく、音が小さい、その上高価である。バロック以前の古楽器演奏家や、室内楽を楽しむアマチュア演奏家が、よく使用している。次に、開発されたのが、金属弦である。私も子供のころは金属弦を使っていた。特徴は丈夫で、音が大きい、張り替えてから音程が安定するまでにあまり時間がかからない。音色はやはり金属的であるが、高い音では悪くなく、ほとんどのヴァイオリンニストが一番高い弦(E線)に使用している。

  最近、人気の高いのが合成繊維性の弦である。プロからアマチュアまで、現在ほとんどのヴァイオリンニストが低いほうの3本の弦にはこの合成繊維性の弦を使用している。特徴はガット弦と金属弦の中間、ややガットよりで、人工のガット弦と言っていいだろう。意外と思うかもしれないが、アマチュアよりプロの演奏家の方が多く使用している。コンチェルトなどを奏くときは大きな音が必要である。また、ガット弦が高価と言うこともあるが、プロの方がよく弦が切れる。とくに本番の多いプロの演奏家は演奏中にも弦がよく切れる。弦を張り替えてから音程が安定するまでに時間がかかるガット弦はとても困るのがもっとも大きな理由である。

   

  かく言う私は最も低い弦にガット弦、中間の二つの弦には日本で開発され、フランスで製造された合成繊維性の弦、最も高い弦に金属弦使用している用している。合成繊維の弦はガット弦より、色彩感が乏しい、いわゆるくすんだ色の音が出る。フランスや北欧の曲が好きな私は気に入っている。

  ちなみにヴィオラはヴァイオリンの低い弦と同じで合成繊維性の弦が使用されいる。チェロ、コントラバスでは金属弦が使用されている。チェロ、コントラバスでも昔はガット弦を使っていた。今でもバロック以前の曲をもっぱら演奏している合奏団ではガット弦を張っている。今後、耐久性の高い合成繊維性の弦が開発されれば、金属弦に取って代わるかもしれない。

  あなたの好きなヴァイオリンニストはどんな弦を張っているのか?気になりませんか?

  (TNVN 2001.9.17.)