奏きなれた曲にもかかわらず、久しぶりのオケに結構戸惑った。ファースト・ヴァイオリンの後ろの方で奏いたのだが、指揮とコンサートマスターの弓の動きを見ながら耳は他のパートの音に集中してみる。それだけでいいのだが、予習不足のとなりの音楽家はそれに加えて楽譜の音符にも集中しなければならない。オケを楽しむ余裕はさらさらなかった。前の方で奏くときは、楽譜に視線を固定しても指揮とコンサートマスターの弓の動きが視野に入り、他のパートの音もはっきり聞こえる。室内楽と同じでこころよい。が、オケの後ろで奏くのは大層難しい…と再認識した。
さて、楽器の演奏法は普遍だという輩もいるが、オーケストラ奏法というのが厳然と存在する。主旋律(メロディー)の演奏はソロとさほど変わらない。だが、たとえばリズムの刻みはオケでは短かめに演奏しなくてはならないし。副旋律や伴奏部では主旋律を邪魔しないように、かつ聞こえるように、音が通るように演奏しなくてはならない。具体的演奏法としては運弓を軽く速く、ビブラートを細かめにするのだが、言うは易し行なうは難し、これがなかなか難しい。これらの奏法はヴァイオリンのレッスンでは普通教えてくれないし、ソロや室内楽では必要がない。副旋律や伴奏部、とくにピアノで小さく演奏する部分でオケの実力が測れるといっても過言ではない。リズム、音程、強弱、バランスは練習量に応じて上達できるのだが、副旋律や伴奏部の上達にはとても長い期間が必要となる。副旋律や伴奏部のうまさが、オーケストラの実力を測る物差しと言っても過言ではない。とはいえ、オケは演奏するのも、聴くのも楽しい。大あじなところはどうしても避けられないが、不謹慎かもしれないが、音楽を使った大宴会?カーニバル?そんな感覚でとなりの音楽家は楽しんでいる。
あなたはオーケストラをどのように楽しんでいますか?
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