ホールと演奏家
 

  先日、新しくできた郡山城ホールに出かけた。桜井市のフルーティストKさんと五条市のピアニストMさんがファゴットのOサンを迎えて三重奏のコンサートだった。このような演奏形態は聴いたことがなく、どんな響きか楽しみにして伺った。小ホールは満員で、ファゴットの温かみのある響きにフルートの的確なテクニック、それを纏め上げるピアノの溶け合ったすばらしい演奏会だった。さて、小ホールは300人あまりの席があり、天井が高く、程よく響きが残り、音響効果はよいように思われた。大ホールものぞいてみたが、こちらも座席がゆったりととってあり、天井が高く、大阪のいずみホールに似た印象をもった。ともに一度は演奏してみたいホールである。

   

  最近はこのような天井が高く、響きが残るホールが増えている。筆者がはじめて経験した本格的音楽ホール?は、京都会館と大阪のフェスティバルホールである。1960年ごろであるが、舞台で演奏する音がホールの一番後ろまでよく聴こえ、それも近くで聞くよりも耳に心地よく響き、たいそう感動したのを覚えている。ただこの手のホールでは、演奏者は自分の音だけでなく、他の演奏者の音も聞こえにくいのが難点である。また、客席の前の方では生の音のみで響きがなく、場所によって聴こえる響きが大きく異なる。

  最近の天井が高く、響きが残るホールは演奏しやすい。自分の演奏する音が客席で聞こえる響きとあまり差がない。合奏していても全体の響きがある程度聞こえるため演奏しやすい。また、客席の場所の違いで響きにあまり差がない。しかし、最近のホールにも少し問題もある。響きが残りすぎるために、速い旋律では音が分離せず、明快に聞こえない点である。ごまかすためにはよいが、精緻な演奏を披露するには少々不向きといえる。とはいうものの、私を含め、大部分の演奏家にとっては最近の響き過ぎるホールは強い味方となっている。

  生音の迫力を楽しむなら最前列、響きを楽しむなら後ろの席、あなたはどちらに座りますか?

  (TNVN 2001.6.20.)