音楽家の冬
 

  先日、山の音楽家のクラリネットのMさんのコンサートが富雄で開かれた。ピアノ伴奏はTくんで、フランスものからジャズまで幅広い曲目で、ワインを傾けながらのとても楽しい時を過ごすことができた。

  “冬は演奏会が少ない”はずだった。昔は冬のコンサートといえば、第九かメサイアぐらい。しかし、最近は少し雰囲気が変わってきた。春秋とちがって大規模なイベントは少ないが、そのために勤勉な?外国の演奏家が多数来日する、日ごろ所属団体などの演奏活動で忙しい日本の演奏家も室内楽などの小規模のコンサートを催すことが多くなった。空調設備の整った小奇麗なコンサート会場も増え、車など交通の便もよくなったからだろうか?

  演奏家にとってという季節はどんな季節か?楽器を演奏していても汗が滴り落ち、集中力もかける夏とちがって、寒い冬は演奏のはじめは手がかじかんではいるが、少しウォーミングアップさえすれば問題なく、集中力もとぎれない。そのためか、中身の充実した演奏会が多いのもこの季節だ。

   

  は楽器にとってどんな影響があるか?まずは弦楽器。冬は寒いが乾燥する。温度差で音程も不安定だ。その代わりとてもいよい点もある。いつももうひとつ響きの悪い自分の楽器が信じられないほどすばらしい響くことがある。思わずにっこりしてしまい、ついつい練習に身が入る。冬はそんな季節でもある。ただ、乾燥しすぎると、楽器の接着剤のニカワの部分がはがれて分解することがあるので要注意。数年前、私がヴァイオリンを奏いている最中に、バン!と大きな音がしたと思ったら黒い指板がはがれて愛器がバラバラに分解し、一瞬体がフリーズしたことがある。そう、裏板がはがれたのも冬だった。

  管楽器の演奏家にはが嫌いな人が多い。気温と吹く息の温度の差が大きな管楽器は音程がとても不安定だ。演奏のはじめは音程が低く、演奏するにつれ音程がどんどん高くなってくるので、合奏するときはずいぶん苦労している。声楽ではいったいどうなのだろうか?声楽の友人は寒い季節には風邪を引かないよう注意すると言っていたが…、でもそれは我々にも言えることだ。

  あなたはこの冬、どんな演奏会にいらっしゃいますか?

  (TNVN 2002.1.30)