となりの音楽家

ひとりごと

コンサートの作り方
となりの音楽家のお友達、山の音楽家の小リスさん。

 

  先日10106の所属するAカルテットのコンサート松本公演2025が無事終了した。もっか心地よい疲労感のなか、コンサートの後始末に追われる日々が続いている。Aカルテットが結成された信州松本の地でのコンサート開催は感慨深いものがある。思えば1974年、信大オケのヴィオラのW氏とチェロのI氏が結成の発起人!忘年会?で10106に声をかけた。心がときめいた。が、一人足りない。10106から「達者な女性はあまたいるが、素敵な女性であれば、他のメンバーの心が乱れ、真摯に音楽に向き合えない。出来れば男のメンバーを所望」とささやかな望みを伝える。白羽の矢が刺さったのが、才能教育音楽院唯一の男性研究生、入学したての若干18才のO氏だった。才能教育では曲は聴いて暗譜するのが原則、Aカルテット結団当初から古典から現代曲まで初見で無節操にあさりまくっており、その練習には大いに戸惑ったもよう。最初に本格的に取組んだ曲はベートーベンの弦楽四重奏曲第1番、そしてショスタコビッチの弦楽四重奏曲第8番。毎週練習するたびにアンサンブルが目に見えて向上するのがメンバー全員に実感でき、充実感が行き渡った。

  しばらくしてIメンバーからの提案で今A温泉に泊まっているプロのチェリストに練習を見てもらうことになった。彼の前で一通り演奏した後、 Aカルテットの今後の練習、活動方針、目標などを伺ったところ「まずコンサートを開きなさい。コンサートまでに纏め上げるという目標も出来るし、コンサートで披露した曲にいったん区切りをつけて、新しい曲にも挑戦できるから 、」と目からうろこの指針をいただいた。これはAカルテットの今も続く活動の原点であり、コンサートを積極的に開いている所以所以でもある。そして、1975年Aカルテット初のコンサートが才能教育会館で開かれることとなった。

   

  コンサートを定期的に同じメンバーで同じ会場で開催している場合は全く必要ないのだが、初めて開催する時は、いくつかクリアーする事項がある。第一に会場:来場者が収容できる座席数(自由席の場合は来場者数が定員の50〜75%が目標。来てもらったはいいが、会場に入れず、謝罪して帰っていただいたエピソードも伺い知る。10106もニアミスの経験が二回ある。一回は椅子を会場のそばの関連施設から慌てて調達して壁際に並べ、もう一回は楽屋にあった椅子を運びだし、通路に並べて何とか対応、事なきを得た。

  第二に入場料:若い頃は資金もなく、会場や印刷などの諸費用を入場料でまかなっていたのだが、10106も今は資金に若干の余裕がある。10106が主宰するとなりの音楽会などでは、貴重な時間を割いてきてくださった来場者の皆さんから入場料はいただいていない。ただ、ただでコンサートを愉しむのは心苦しいとの声も多く寄せられたことから、最近は受付に募金箱を用意して、集まった浄財を全額地域の子供食堂に寄付している。あとは会場の響き、演奏のしやすさ、来聴者が音楽に集中できる環境、交通の便などであるが、どれを優先するかはとても流動的、今も悩みが尽きない。プロのコンサートでは興行上の結果が最も重要となる。しかし、それを求めずにあれこれ悩み、その過程を愉しむことができることがアマチュア演奏家の特権かもしれない。初めての地域、新しいコンセプトでコンサートを開くときは10106もこの原点に戻って始動する。

  10106の主宰するコンサートではアンケートを集めている。その結果は実に興味深い。コンサートの時間は映画と同じ2時間がベスト。それ以上長くても、短くても、しっくりこないお客様からメッセージが届く。プログラムの曲目は変化に富んだ構成がまちがいない。有名な名曲は常に評価が高い。しかし、難解で個性的な曲目にも少ないながら一定数のコメントが届く。そんなお客様ほど「となりの音楽会」のディープなファンになってしまうようだ。コンサートの愉しみ方は人それぞれ。そんな皆さんに囲まれて10106は心地よく音楽を奏でる。ちなみに「となりの音楽会」ではアンケートを記載していただいたお客様に案内状を発送している。毎年の入場者数は案内状の発送数とほぼ同数(お連れがいるので、、、)。「となりの音楽会」の愉しみ方を熟知しているリピーターのお客様が、コンサートを支えている。

あなたが通いつめるコンサートはありますか?アンケートは出演者とっての宝物。これからもご協力よろしく

 

 

  (10106: 2025.5/16)  

となりの音楽家ひとりごと

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