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* 概要 [#r6930bf3]
* 概要 - Overview [#r6930bf3]
#contents
Last-modified: &lastmod();
** このページについて [#ie2b0c1a]
AngelScript(以下AS)を全く知らない人が,ASについてなんとなく理解してもらえるような記事を書きます。
細かいことについては各ページを参照してください。
詳細については各ページを参照してください。
** 特徴 [#laa17591]
ASはLightweightLanguage(以下LL)の1つでLuaやSquirrelなどと同じような用途で使われます。
''静的型付け''
ASの最大の特徴は''静的型付け''にあります。
静的型付けとはC/C++などと同様に
未定義の型・シンボルの使用をコンパイル時にチェックすることができ
もしそのようなものが使用されていたらエラー扱いにできます。
LuaやSquirrelなど他のLLの多くは動的型付けを採用しています。
動的型付けですと,コンパイルという作業をスキップできる代わりに
実際にそのコードが実行されるまで未定義の型・シンボルのチェックができません。
小規模・少人数なアプリケーションの開発では動的型付けでもなんとかやっていけますが
大規模・多人数なアプリケーションの開発になればなるほど,
コンパイル時エラーチェックの重要性が増してきます。
Squirrelでゲームのほとんどを実装したという
「小さな王様と約束の国 ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル」の開発者さんが
「自前である程度のスクリプトコードの事前チェックをできるようにした」というような内容を話していました。
「自前である程度のスクリプトコードの事前チェックをできるようにした」というような内容が話されています。
それぐらいアプリケーション実行前のエラーチェックはアプリケーションの品質維持に重要なものです。
''構文がC++にとても似ている''
ASは構文がC++にとても似ているため,C++経験者であれば構文について少し勉強するだけでコーディングを始められます。
また,C++ソースコードをメインとして使用するプロジェクト(ほとんどのゲーム開発はC++を使っています)では
ASソースコードとC++ソースコードの2つをコーディングしていくことになります。
そのような状況では,両者の構文が似ていることから頭を大きく切り換える必要がなくなります。
これが意外と重要なことで,ミスや変な混乱が少なくなります。
''C/C++バインディング機能''
ASのスクリプトからC/C++の関数や構造体・クラスなどにアクセスができ
逆にC/C++からASの関数や構造体・クラスなどにアクセスができます。
C/C++の関数・構造体・クラスなどをASのスクリプトからアクセスできるようにするには
ASライブラリの何個かの関数を呼ぶだけで大丈夫です。
''コルーチン機能''
途中で処理を中断するコルーチン機能に対応しています。
この機能があるためテキストアドベンチャースクリプトやRPGのイベントスクリプトとして
ASを導入することが比較的簡単です。
''バイトコードをバイナリ保存可能''
スクリプトコードをデータとしてROM媒体(光ディスクやフラッシュカードのこと)に収録すると
ソースコードを配布していることと同じになってしまいます。
これは会社・団体的にNGなことがよくあります。
ASではスクリプトコードをコンパイルしたあと,バイトコードを出力するという機能があります。
バイトコードとは,C言語でいうところのコンパイル後のオブジェクトファイルに相当するもので
それだけを見てもぱっとは何をしているのか分からない状態になります。
この機能を使い,製品版のROM媒体にはスクリプトコードでなくバイトコードをのせることで
ソースコード配布状態を回避することができます。
''十分なデバッグ機能''
スクリプトをメインに使ってゲーム開発をするとなるとデバッグ機能が必要になります。
ASでは
・実行ファイル・行の取得
・変数の中身のダンプ
・コールトレースの取得
・エラー・例外ハンドリング
といった機能をライブラリが提供しています。
これらの機能をアプリケーション側で使えるようにさえすれば
バグ調査時も特別な苦労はせずにデバッグすることができます。
** HelloWorld [#n16ecae6]
ASのスクリプトを実行するサンプルコードです。
本家のsampleコードを参考にしています。
#code(c,){{
// include
#include <iostream> // cout
// AS用ヘッダのインクルード
#include <angelscript.h>
#include "../../../add_on/scriptstring/scriptstring.h" // RegisterScriptString用。環境によって場所が変わります。
// コンソール出力用関数
void PrintString(string &str)
{
std::cout << str;
}
// メイン関数
int main(int argc, char **argv)
{
using namespace std;
int r = int();
// スクリプトエンジンの作成
asIScriptEngine *engine = asCreateScriptEngine(ANGELSCRIPT_VERSION);
if( engine == 0 )
{// エラー
cout << "Failed to create script engine." << endl;
return -1;
}
// stringを扱えるようにする
RegisterScriptString(engine);
// PrintString関数をPrintという名前の関数として登録
r = engine->RegisterGlobalFunction("void Print(string &in)", asFUNCTION(PrintString), asCALL_CDECL);
if ( r < 0 )
{// エラー
engine->Release();
return -1;
}
// スクリプトをコンパイル
{
asIScriptModule *mod = engine->GetModule(0, asGM_ALWAYS_CREATE);
// ソースコードを追加
r = mod->AddScriptSection("script",
"void main() "
"{"
" Print( \"Hello World!\" ); "
"}"
);
if( r < 0 )
{// エラー
cout << "AddScriptSection() failed" << endl;
engine->Release();
return -1;
}
// ビルド
r = mod->Build();
if( r < 0 )
{// エラー
cout << "Build() failed" << endl;
engine->Release();
return -1;
}
}
// コンテキストを作成
// 1つのコンテキストは1つの実行スレッドのようなもの。
asIScriptContext *ctx = engine->CreateContext();
if( ctx == 0 )
{// エラー
cout << "Failed to create the context." << endl;
engine->Release();
return -1;
}
// 実行する関数のIDを取得する
int funcId = engine->GetModule(0)->GetFunctionIdByDecl("void main()");
if( funcId < 0 )
{// エラー
cout << "The function 'float calc(float, float)' was not found." << endl;
ctx->Release();
engine->Release();
return -1;
}
// 実行準備
r = ctx->Prepare(funcId);
if( r < 0 )
{// エラー
cout << "Failed to prepare the context." << endl;
ctx->Release();
engine->Release();
return -1;
}
// スクリプト実行
r = ctx->Execute();
// 後片付け
ctx->Release();
engine->Release();
return 0;
}
}}
** スクリプトのサンプルコード [#e7d5afb5]
以下がASのソースコードの例です。
#code(c,){{
// クラスの宣言。
class Vector3
{
// メンバ変数の宣言
// public,privateなどのアクセス修飾子はありません
float x;
float y;
float z;
// デフォルトコンストラクタ
Vector3()
{
}
// コンストラクタ
Vector3(float aX, float aY, float aZ)
{
mX = aX;
mY = aY;
mZ = aZ;
}
// デストラクタ
~Vector3()
{
}
// メンバ関数
void add(
const Vector3 &in aVec // 引数にconstや参照修飾子を付けることができます
)
{
mX += aVec.x;
mY += aVec.y;
mZ += aVec.z;
}
// constメンバ関数
float sum()const
{
return mX + mY + mZ;
}
// 演算子のオーバーロード
// これは += をオーバーロードしています
Vector3@ opAddAssign(
const Vector3 &in aVec
)
{
add( aVec );
return this;
}
}; // セミコロンはあってもなくても可能。
// enumの宣言
enum SampleKind
{
SampleKind_A
, SampleKind_B
// term
, SampleKind_TERMINATE
, SampleKind_MIN = 0
, SampleKind_MAX = SampleKind_TERMINATE-1
};
// interfaceを使ったサンプル
// C#やD言語のinterfaceと同様です
interface IUpdatable
{
void updatableUpdate();
};
interface IDrawable
{
void drawableDraw()const;
};
class Chara
: IUpdatable
, IDrawable
{
void updatableUpdate()
{
}
void drawableDraw()const
{
}
};
// クラスの継承
// D言語やC#のように1つのみ継承できます
class Base
{
};
class A : Base
{
};
// グローバル変数
int globalInt32Value = 0;
// グローバル関数
void func()
{
// 組み込み型の紹介
int8 int8val;
int16 int16val;
int int32val;
int32 int32val2;
int64 int64val;
uint8 uint8val;
uint16 uint16val;
uint uint32val;
uint32 int32val2;
uint64 uint64val;
bool boolVal;
float floatVal;
double doubleVal;
// 変数は明示的に初期化値を指定できます
int initializedValue = 10;
// 未確認情報:最新版では初期化値を指定しないと0(boolはfalse)で初期化されるようです。
// D言語やC#のように未初期化変数が発生しない仕組みは素晴らしいですね
// (手元はかなり古いr320版を使っており,この当時ではまだ実装されていません)
int notInitializedValue; // 0で初期化される
// 初期化値を指定しないと値は不定となります
int notInitializedValue; // 何の値になるかは不定
// boolの値としてtrue,falseが使えます
bool trueValue = true;
bool falseValue = false;
// const変数が使えます
const int constantValue = 100;
// 16進数が使えます
const int hexValue = 0xFFFF;
// float値の接尾語が使えます
const float floatValue = 1.2f;
// if-else文が使えます
if ( true )
{
}
else
{
}
// for文が使えます
for ( int i = 0; i < 10; ++i )
{
break; // continue/breakが使えます
}
// while文が使えます
while ( true )
{
break; // continue/breakが使えます
}
// do-while文が使えます
do
{
break; // continue/breakが使えます
} while( false );
// switch文が使えます
switch( 3 )
{
case 1 : break; // breakが使えます
case 2 : break;
default : break; // defaultが使えます
}
// クラスのインスタンスはC++と同じように書きます
Vector3 vec(1,1,1);
// オブジェクトハンドルというポインタのような概念があります
Vector3@ vecHandle = @Vector3();
// オブジェクトの寿命は参照カウンタで管理されます
// 参照カウンタが0になるとデストラクタが呼ばれます
{
Vector3@ objA = @Vector3(); // カウンタ1
Vector3@ objB = @objA; // カウンタ2
@objA = null; // カウンタ1
@objB = null; // カウンタ0 デストラクタが呼ばれる
}// スコープを抜けるタイミングでnullでないスコープローカル変数の参照カウンタは減ります
}
}}