となりの音楽家

ひとりごと

ベートーベンの弦楽四重奏曲
となりの音楽家のお友達、山の音楽家の小リスさん。

 

  今10106の所属するAカルテットでベートーベンの弦楽四重奏曲を練習している。No.3とNo.12だ。ベートーベンは16の弦楽四重奏曲を書いている。No.1〜6は前期、No.7〜10は中期、No12〜16は後期と分類されている。(No.11は中期と後期の端境期?)弦楽四重奏曲はハイドンが形式を確立、モーツアルトが形式を踏襲、発展させ、多くの名曲が生まれた。そしてベートーベンはその形式を尊重して作曲したのが前期の弦楽四重奏曲とされている。

  Aカルテットも1974年、結成最初に練習を開始したのが、ベートーベンの弦楽四重奏曲第一番であった。その後、仕上げてコンサートで披露した曲はNo1、2、7、8、9、10、11、14と他の作曲者と比べて明らかに多い。AカルテットのセカンドヴァイオリンのO氏の大のベートーベン好きの影響もあるのだが、ベートーベンの曲ではファーストヴァイオリン以外の楽器に重要な旋律を担わせている部分が多い。そのため、練習には困難さを伴うのだが、練習するたびに新たな発見があり、アンサンブルの進歩も自覚することが出来るのも大きな魅力なのだろう。また、多くのアマチュア・カルテットではヴィオラ、チェロのテクニックが高くないことが多く、その場合はハイドンやモーツアルト、はたまた前期ロマン派の曲などが公開演奏には適している。しかし、Aカルテットのメンバーは皆さん猛者!先日もコンサート後、ロビーで来聴者から「このカルテットは中・低音楽器のレベルが高いですね。」との感想をいただいた。もちろん?その後10106の顔色を見ながら「もちろん、ヴァイオリンもですが、、、」とのフォローもあったが、、、実際その通りなのだが、ベートーベンの曲ではヴィオラ、チェロのテクニックが十分に発揮でき、重要でカッコイイ箇所もふんだんに準備されているからでもある。

   

  簡潔で形式美の前期、ドラマチックで華麗な中期の曲も悪くないが、今Aカルテットが嵌っているのは後期に属する。音楽書籍をはじめ、数々の著作でベートーベンの後期の弦楽四重奏曲の素晴らしさが報じられている。10106の中・高校時代に所属していたRカルテットでは、手に入る楽譜で様々な曲を楽しんだ。ベートーベンの曲は構造が緻密で高度なことから、練習には取組んだが、なかなかものにはならず、公開演奏することはなかった。その上後期の曲にいたっては調性に加え、臨時記号の多さから、練習にとりかかることさえなかった。結局、演奏しやすく、構造も理解しやすいハイドン、モーツアルト、ロマン派の曲がRカルテットのレパートリーの大半を占めた。

  20前後のメンバーで活動を開始したAカルテットでは最初にベートーベンと同時にショスタコヴィッチの曲にも取組んだ。そのこともあったのだろう。初見は難しいのだが、調性や臨時記号の多さには偏見がなく、練習を繰り返せば徐々に形を成してくる楽しさを実感するようになった。そして、アンサンブルの成長にベートーベンは欠かせない曲となった。そして後期の曲として最初に取組んだのはNo14。この曲は難解で長い!コンサート前でも結局仕上がらないまま公開演奏に至る。しかし、10106のコンサートの来聴者は優しい!ところどころとてもいい響きだったと慰めてくれた。昨年は中期と後期の端境期のNo.11を何とか纏め上げた。今回挑戦するNo12ではメンバーの理解度、アンサンブルの成長もあり、かなり完成度の高い演奏が期待される。

  後期の曲に取組んでわかったことも多い。調性や臨時記号の多さは当時としてはまさに画期的だったのだろう。演奏困難な箇所も目白押し、演奏者からのクレームも多かったに違いないが、ベートーベンは頑固爺に徹してわがままを貫いたに違いない。楽譜にはベートーベンからのきわめてたくさんの要望が書き込まれている。それに従い忠実に演奏することに集中しすぎたのか?確かに上手いのだが、音楽が流れず、面白くない演奏も最近少なくない。10106が後期の曲の演奏法から学んだことがある。頑固親父と付き合うのは一言一句に反応せず、ざっくりと受け取ることが肝要!常に尊敬の念を抱きつつ、、、

  あなたは頑固親父?とうまく付き合っていますか?頑固親父の魅力を上手に引き出せていますか?  

 

  (10106: 2024.2/3)  

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