トリオ・ラ・モンターニャ

TLMノート

 ピアソラは終わらない

 

  2002年TLM“トリオ・ラ・モンターニャ”の奏き初めは1月5日、“タンガータ”“ミケランジェロ 70”の初合わせだった。“タンガータ”はいくつかの曲の要素を組み合わせて構成されており、別名タンガータ・フィナーレとも呼ばれている。ちなみに“タンガータ”の最初のテーマは“孤独”から取られている。

  今回のTLM“タンガータ”のアレンジはピアソラ五重奏団の楽譜がもとである。最初のテーマはピアニカ、ギターのカデンツァはコントラバス、ヴァイオリンとギターのデュエットはヴァイオリンとコントラバスで演奏することに落ち着いた。エンディングは手持ちの楽譜とピアソラの名盤“ダブルAの悲劇”の演奏とかなり異なる。最初ピアソラ五重奏団の演奏をベースにしてみたが、もうひとつしっくりいかない。試行錯誤の末、ヴァイオリンとコントラバスの音を増やしてTML独自の迫力あるエンディングがついに完成した。

  

  そんな練習の後、ピアソラのエンディングの話で盛り上がった。クラシックの古典やロマン派音楽では、最後の音は“終わった!”という感じを明確に表現する曲がほとんどだが、ピアソラの曲ではそのような終わり方をする曲はほとんどない。ピアソラのエンディングの特徴は盛り上がってきて、最後に急に力を抜く。“そこに性的な臭いがする”との一部の評価もある。またもう一つ、近代-現代音楽のように“さらっと”あるいは“消え行く”ようなエンディングも多い。“現在(いま)”を切り取って、生々しく表現するピアソラには、エンディングはあるはずがないのかもしれない。

  TMLも終わりのないピアソラの世界に足を踏み出してしまったようだ。

(2002.1/30)