トリオ・ラ・モンターニャ

TLMノート

 アレンジ

 

  “トリオ・ラ・モンターニャ”ピアソラ・コンサート 2001が終わり、トリオ・ラ・モンターニャのメンバーは快い虚脱感に浸っている。さて、ぼちぼち新曲にとりかからなければならないのだが、曲がない。というのも、ピアソラの曲は星の数ほどあるのだが、トリオ・ラ・モンターニャのような、ヴァイオリン、コントラバス、ピアノ(ピアニカ)編成の楽譜は出版されていないからだ。当然、録音も存在しない。そんな理由で、トリオ・ラ・モンターニャの演奏する曲のアレンジ(編曲)は必然的にすべてオリジナルとなっている。

  

  タンゴは、アルゼンチンの港町ヴェノスアイレスの酒場で演奏されはじめたとされている。最初はフルートとギター、次にヴァイオリン、ピアノなどの演奏も行われるようになった。19世紀の末ごろには、トリオ・ラ・モンターニャのようにヴァイオリン、コントラバス、ピアノによるトリオのタンゴ演奏三重奏団も存在したようである。しかし、その後バンドネオンが中心となるタンゴ演奏楽団が中心となってくる。そして、20世紀前半のタンゴ全盛期を迎えた。いままた、ピアソラの台頭で小編成の演奏団体が増えてきている。

  さて、トリオ・ラ・モンターニャも含めて現代のタンゴ楽団演奏する楽譜はどうしているのかといえば、楽団の楽器に合わせてその都度アレンジしている。この辺がクラシック音楽とかなり異なる。クラシックではまず、楽譜が存在する。たとえばトリオ(三重奏)、クラシックではヴァイオリン、チェロ、ピアノのトリオのために作曲された曲があれば、ヴァイオリン、チェロ、ピアノの演奏家が集まって演奏する。ピアソラにもヴァイオリン、チェロ、ピアノのトリオようにアレンジされた楽譜もいくつか出版されているが、トリオ・ラ・モンターニャの場合は、いったんチェロのパートを削除してまったく異なったコントラバスのパートの骨格を作る。次にヴァイオリンとピアノパートを修正する。こうしてできた楽譜をベースにして、練習のたびに修正していくのである。コンサート当日のリハーサルで修正することも少なからずある。ジャズや大衆演劇にも通じるアドリブの世界がそこには存在する。

  いま、アレンジに取り掛かっているのは、“天使のミロンガ”、“タンガータ”、“ミケランジェロ 70”。手に入ったピアソラ五重奏団の演奏譜がベースである。トリオ・ラ・モンターニャではどんな響きで表現できるのか?今から、楽しみである。

(2001.11/10)